三面等価の原則は、「支出」「生産」「分配」のGDPが等しくなる原則です。
ですが、表面的な言葉を覚えるばかりで「だから?」「何が言いたいの?」と、肝心なことがわからない人も多いのではないでしょうか。
ここでは、そんな三面等価の原則を、GDPとの関係も含めわかりやすく解説します。
三面等価の原則とは
GDPには3つの側面があります。その3つの側面のGDPはどれも同じ金額になる(=等価になる)というのが三面等価の原則です。
GDPの3つの側面とは「生産面」「支出面」「分配面」です。
| GDPの側面 | その内容 |
|---|---|
| 生産面のGDP | 作る側(生産面)の作り出した経済的価値の合計値 |
| 支出面のGDP | 買う側(支出面)の支払った経済的価値の合計値 |
| 分配面のGDP | 生み出された経済的価値の分けた先の合計値 |
これは、難しいことを言っているわけではなく、例えば車を作れば「生産」、車が売れれば「支出」、その売り上げを賃金や税金として支払えば「分配」と形を変えるよね。と言っているだけです。
生産面のGDP
生産面のGDPは、その名の通り、「どれだけ経済的価値を生み出した(生産した)か」となります。
最もイメージしやすいGDPの側面でしょう。
例えば、工場で自動車を生産したなら、その自動車の総額、タクシー輸送をした場合は、輸送にかかった売り上げの総額などを指します。
支出面のGDP
支出面のGDPは、生産されたものに支払ったものがカウントされるGDPです。
自動車を買った額、タクシーに支払った額などを指します。
GDPは、「持ち家の帰属家賃」や「農家の自家消費」といった貨幣取引を含まないものもカウントします。
この場合も、
「家主が自分自身に“持ち家に住むサービス”に対する対価を支払った」
「農家が自分に“自分で作った野菜”の対価を支払った」
とみなして支出面のGDPにカウントします。
支出面のGDPがどういう要素で成り立っているかと言うと、45度線分析における「総需要」の考え方と同じです。つまり、以下の式で表せます。
支出面のGDP=消費+投資+政府支出+輸出―輸入
(Yd=C+I+G+Ex-Im)
詳しくはこちらをご覧ください。

分配面(所得面)のGDP
「分配」は、生み出された経済的価値を国内でどう分かれたかを示します。
例えば、車を作った会社は、その売り上げを従業員の報酬や株主の配当にします。
報酬をもらった従業員はその報酬の一部を税金として政府に納めます。
※部品などの仕入れ(中間生産物)は、そもそもGDPの計算から除外しますが、部品屋の売り上げがGDPにカウントされるため、そこで同じ分配が起こっています。
これらはみな、それぞれの経済主体の「所得」とみなせるので、分配面のGDPは「所得面のGDP」ということもあります。政府統計などは所得面を使っています。
なお、分配面のGDPの構成は、国の統計上、以下のように分解しています。
分配面のGDP=雇用者報酬+営業余剰+固定資本減耗+間接税―補助金
| 雇用者所得 | 労働者への賃金 |
| 営業余剰 | 企業の利潤に相当する部分 |
| 固定資本減耗 | 生産設備の摩耗分です。 ※摩耗して無くなった分を「企業からの分配」とみなしています(特殊です) |
| 間接税ー補助金 | 政府の所得を表す 直接税と補助金は「営業余剰」「雇用者所得」に含まれるためここには含みません |
三面のGDPは常に等価になる
この3つの側面のGDPの値は、常に同値になります。
生産面のGDP=支出面のGDP=分配面のGDP
つまり、生産面のGDPが100億円なら、支出面も分配面も100億円になるのです。
1国で、1台100万円の車しか生産しなかった場合、それぞれのGDPの意味するところは…
- 1台100万円の「車」という経済的価値を生産(生産面)
- 1台100万円の「車」に経済的価値を支払った(支出面)
- 100万円分の「価値」を賃金や配当、税金に分けた(分配面)
というように、GDPの見方の角度を変えただけで、中身の総量は変わっていないからです。。
したがって、三面のGDPは常に同額になります。これが三面等価の原則です。
ですが、以下のような疑問を持つ人もいるかもしれません。
Q.統計上本当にそうなっているの?
実は、実際に計測されたGDPは三面で数値がやや異なっています。
しかしこれは、統計的な誤差によるものでしかありません。
1国の経済となると膨大な量の統計資料を繋ぎ合わせるために、やや誤差が出てしまいます。
むしろ670兆円(2025年)もの巨額のGDPとなる日本でこれだけしか誤差がないのは我が国の統計機関がかなり優れているともいえるでしょう。
Q,売れ残りがあると支出と生産は一致しなくない?
実際の商売では「作りすぎてしまって、売れ残ってしまった」というケースはたくさんありますね。
例えば100台車を作って10台売れ残れば、生産面のGDPは100台ですが、支出面のGDPは90台で一致しません。
しかし、この場合も一致するようになっています。
というのも、ややテクニカルな手法ですが「企業は将来売るための在庫を自身で買い取った」として、支出面でもカウントします。これで支出面のGDPも100台です。
ええ!ズルでは?
と思いましたか?
実は…半分そうです!
理屈上は正しい
まず、理論上は間違いではありません。というのも、企業が製品を今期作りすぎた場合、来期の生産を抑えて調整することになります。
これは理論上、「来期分の分を今期生産した」とみなせます。
そのため、この考えは簿記や経済学の理屈としては正しいのです。
統計上やや正しくはない
とはいえ、実は、実際の統計ではこれによってやや誤差が出ることがあります。ズルではないかと言ったのはこの部分です。
例えば、急激に不景気になり、在庫が積みあがったとしましょう。企業の売り上げは落ちますが、それは「在庫投資」とみなすため、GDPが思ったより減らないということがあります。
一方で、逆に景気は良くなったのに前年に積みあがった在庫が売れただけなので、生産が行われず、GDPが思ったより増えなかというケースもあります。
ですが、こうした場合も概ね問題はありません。なぜならば、そうした誤差がでても、影響は四半期~長くても1年と短期間に収まるからです。
さらに、企業は本当に「在庫投資」をしている場合がありますが、その見分けも尽きません。
本来の在庫投資と、ただの売れ残りを見分けようとコストを掛けるよりも、「在庫は全て支出」と割り切ってしまったほうが統計上も都合がいいのです。
「三面等価の原則」の目的
この「三面等価の原則」、いったい何のために覚えるのか空虚ですよね。
これは、マクロ経済の実態の理解を深めること、統計上
45度線分析と三面等価の関係
45度線分析は、三面等価の原則をグラフで表した形になります。
45度線分析を扱ったこの記事では、混乱を避けるため、グラフの横軸を単なるY(国民所得)と表現しましたが、分配面の国民所得と言い換えることもできます。

GDPやYは「国内総生産」ですが、ここでは伝統的に「国民所得」という用語で統一しています。
三面のGDPは「結果」は同じでも「過程」は異なる
三面等価の原則では「生産面」「支出面」「分配面」の最終的な数値は一致します。
ですが、それぞれのGDPは、別々のファクターからなっています。
例えば、支出面(総需要)GDPは、Y=C+I+G+Ex-Imです。
分配面のGDPも統計上「雇用者報酬+営業余剰+固定資本減耗+間接税―補助金」と表しました。
供給面(総供給)GDPは有効需要の原理によりY(支出面のGDPにより決まる)です。
このように、3つのそれぞれの成り立ちの異なるGDPがどう組み合わさればその国のGDP(均衡国民所得)が決まるのかを考えるのが45度線分析の目的です。
問題となる供給と需要の関係に着目している
国民所得の決定で主に問題になるのは「供給と需要の関係」です。
そのため、グラフにするのは総供給(45度線)と支出面(総需要曲線)であり、そのグラフの働きで従属的に求められるのが分配面のGDP(つまり横軸)というわけです(図)。

45度線の詳しい内容に関しては、シリーズ化しておりますので、良ければご覧ください。
①45度線そのもの、分析の目的等の解説

②45度線のグラフの意味、中身についての解説


