名目GDPと実質GDPの違いとは?どちらを使うとよいのか、わかりやすく解説!

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名目GDPと実質GDPの違いについて、両者の違いから、より深い理解まで計算問題付きでわかりやすく解説します。

名目GDPと実質GDPの違い

名目GDPと実質GDPの違いは、「物価上昇率の影響を考えられているGDPなのか」によります。

  • 物価上昇率の影響を考えていないGDP…名目GDP
  • 物価上昇率の影響を考えているGDP…実質GDP

ということになります。端的に言えばこうなのですが、以下でもう少しわかりやすく、それぞれ解説します。

名目GDPとは

名目GDPは、物価上昇率の影響を考えないGDPと言われます。

GDPはその国で生産された粗付加価値の合計額です。したがって、その国のGDPに含めることのできる金額をそのまま合計したものが名目GDPです。例えば、ある国で1年間に

  • 1台100万円の車を100台(100万円×100台=1億円)
  • 1つ100円のパンを50万個(100円×50万個=5000万円)

を生産した場合、名目GDPは1億5000万円です。

こうした「出てきた数値を単純に積み上げた、何も考えないで算出したGDP」が名目GDPです。

実質GDPとは

実質GDPとは、逆に物価上昇率の影響を取り除いたGDPです。

例えば、名目GDPが600兆円から660兆円に10%増えても、物価上昇率(インフレ率)が10%増えたなら、実質GDP成長率は0%です。

例えば、先ほどと同じ例ですが、

  • 1台100万円の車を100台(100万円×100台=1億円)
  • 1つ100円のパンを50万個(100円×50万個=5000万円)

上記のとおり生産する国があったとして、車やパンの品質が変わらないのに、インフレが10%あって

  • 1台110万円の車を100台110万円×100台=1億1000万円)
  • 1つ110円のパンを50万個110円×50万個=5500万円)

このようになった場合、名目GDPは(1.1億+0.55億=)1億6500万円になります。

しかし、最終的に生産された車やパンの個数は変わっていないですよね?

したがって、実質GDPは変化なしということになるのです。

実質GDPの統計上の算出方法

実質GDPの計算方法は名目GDPからインフレ率の影響を除くことで算出します(詳しくは下にスクロール(ここをクリック)

実際の統計では、「基準年」を設けて、5年間、その基準年からどれだけインフレが進んだのか?を基に、実質GDPを計算します。

例えば、日本政府は、直近では2020年を「基準年」として、次のようにGDP統計を発表しています。

暦年名目GDP実質GDPGDPデフレーター前年比=GDPベースのインフレ率
2020年554554基準年
2021年573.6574−0.0%(ほぼ横ばい)
2022年584.9581.7+0.6%
2023年616.0585.9+4.6%
2024年634.7584.9+3.2%
2025年663.5591.1+3.4%
出典:内閣府「国民経済計算(GDP統計)」を参考に筆者作成

内閣府は基準改定について、産業連関表などの統計を約5年ごとに取り込み、参照年を「名目値=実質値、デフレーター=100となる年」と説明しています。現行系列は2020年を参照年としています。

なぜ実質GDPが必要なのか

名目GDPを覚えるだけでも精いっぱいなのに、なぜ実質GDPを覚える必要があるのでしょう?

それは、GDPを算出する目的にあります。GDPを算出する目的は、「その国の経済力を測りたいから」です。

そして、その「経済力」というのは、「お金をいくら稼いだか」ではなくて「価値ある財・サービスをどれだけ生産できたか」で測ります。

例えば同程度の人口水準で1年に100台の自動車を生産できる国と、1000台の自動車を生産できる国なら、後者の方が豊かな国だと推定できます。

ですから、本当に正確なGDPを測りたいなら、GDPは生産された財・サービスを1台、2台…とカウントするのが正しいということになります。

「仕方がない」から金額換算してる

しかし、それだと数え方もバラバラで比較することが極めて困難なため、仕方なく金額換算でカウントをしています

例えば冒頭の例のように、自動車1台100万円、パンが1個100円ならなら、「車を100台、パンを50万個生産する国」のGDPは1億5000万円と統一的な単位で表せます。

これなら、半導体を作る国、SNSを配信する国など、多くの種類の生産物を生産する国同士で経済力の比較が可能になり、便利なわけです。

物価の影響は単位を統一して便利にした代償

実際に生産される財・サービスの総量を金額に換算するおかげで、私たちは容易にその国のGDPを時系列や他国どうしで比較することができるようになりました。しかし、その代償として物価上昇の影響を考える必要が出てきたわけです。

インフレは、全ての財・サービスの価格が一様に引きあがる現象です。見かけの価格が上がったからと言って、生産される財・サービスの総量が増えたわけではないので、生活が良くなったとは言えません。

例えば名目GDPが10%成長したとしても、実質成長率が0%成長なら、その国は例えば「100台の自動車を生産できる」という状態からは変化がなく、ただ金額換算でみた場合に10%伸びたように「見える」といえます。

逆に実質GDPが10%したなら、同じ国でも101台と、1台多く自動車が生産できるようになったということ。1台分の売り上げは増えるため、その利益分、その国は豊かになったと言えます。

名目GDPから実質GDPを求める計算方法

名目GDPから実質GDPを求めるには、名目GDPからインフレの影響を除いてやればよいだけです。

名目GDPを実質GDPにする方法

名目GDP実質GDPに変換するのは、数式としては簡単です。

実質GDP名目GDP÷物価上昇率

なぜなら、実質GDP×物価上昇率=名目GDPだからです。両辺を物価上昇率で割ると上記の方程式になります。

※(ピンとこない人にさらに解説)例えば、4%のインフレが起きると、100円のりんごは100円×1.04=104円になりますね。この「100円のりんご」を「実質GDP」に置き換えているだけです。

では問題を解いてみます。

前年のGDPが600兆円で今年のGDPが660兆円
インフレ率が4%であった場合、前年を基準とした実質GDPはいくらか?

解き方は、上記の方程式の通り、「今年の名目GDP」について、インフレ率4%で割るだけです。ひかっけでおいてありますが、前年のGDPは考える必要がありません。

  • 実質GDP=名目GDP÷インフレ率
  • 実質GDP=660兆円÷1.04
  • 実質GDP=約635兆円

名目GDP成長率を実質GDP成長率にする方法

では、GDPではなくGDP成長率(前年のGDPに比べて今年のGDPが何%成長したか)を求めてみましょう。

まずは成長率の基本的な考え方は以下です。

GDP成長率
=(今年のGDP-前年のGDP)÷前年のGDP

100円が103円になると、(100円-103円)÷100=0.03(3%)ですね。これと同じ要領です。

では問題です。数値は先ほどの問題と同じです。

前年のGDPが600兆円で今年のGDPが660兆円
インフレ率が4%であった場合、実質GDP成長率はいくらか?

実質GDP成長率を求める場合は、まず最初に「今年の実質GDP」を求めれば、上記の方程式が使えるようになります

実質GDPは先の問題で算出できているので、活用しましょう。

  • 実質GDP成長率=(今年の実質GDPー前年の実質GDP)÷前年の実質GDP
  • =(635兆-600兆)÷600兆
  • =35兆÷600兆
  • =約0.058
  • 実質GDP成長率=5.8%

日本のGDPは650兆円くらい

余談になりますが、日本の2025年の名目GDPは663兆円です。本記事も日本のGDPに近い数字を使用しました。

2024年からの名目成長率は4.5%増と、ここ30年最大でも1%超しか成長できなかった日本としては異例の増加幅となっています。

ただし、実質GDPとその成長率はそれぞれ約590兆円、1.1%増と、やや好調とはいえ、ここ30年と同水準です。

つまり、インフレが進んだために4%超の高成長に見えますが、実質、すなわち「生産物の生産量」は1.1%しか増えておらず、必ずしも生活水準が大きく改善しているとは言えないということです。

このように、名目GDPと実質GDPを使い分けることができれば、世の中の経済状況を冷静に判断できるようになるのです。