45度線の計算問題で頻出の「GDPギャップ」。特に「インフレギャップ」「デフレギャップ」との違いや意味が分からず混乱してしまう人も多いですよね。
大学の経済学部というよりは公務員試験や中小企業診断士等の試験問題で出題されることが多く、受験生としてはしっかりと理解しておきたいところ。
この記事では、そんなGDPギャップ、デフレ・インフレギャップについて、計算方法を含めてわかりやすく解説します。
GDPギャップとは
GDPギャップとは、潜在GDPと実際のGDPとの差を表す指標です。
例えば
- 潜在GDPが600兆円
- 実際のGDPが500兆円
という場合、GDPギャップは600兆円ー500兆円=マイナス100兆円です。
潜在GDPとは
潜在GDPとは、その国に存在する生産要素をフル活用した場合に実現できるGDPのことです。
「生産要素」とは、工場などの生産設備と、労働力のことです。
・非自発的失業がゼロ
・メンテナンス等以外で停止している機械(遊休設備)がゼロ
の状態のことをいいます。
ちなみに潜在GDPは計測が難しいため理論上の推計値です。
非自発的失業と遊休設備がゼロというのは「完全雇用」ともいうため、潜在GDPのことを「完全雇用GDP」と言う場合もあります。
45度線分析での「GDPギャップ」
45度線分析で、GDPギャップはよく出題されるテーマの一つです。
45度線分析におけるGDPギャップは、完全雇用GDPと均衡GDPとの差になります。

(図では横軸を「国民所得」としていますが、「GDP」と同義で使っています)
▼45度線分析について詳しくはこちら

▼均衡GDPについてはこちら

均衡GDPと完全雇用GDPは同じとは限らない
均衡GDPはあくまでも「総需要と総供給が一致して釣り合っているGDP」であり、ポテンシャルを最大限生かせたGDPではありません。
例えば、次のように、失業が発生して働いていない人がいるときでも、その分供給量を減らせばGDPは均衡します。
- 完全雇用だと500人が働き、10億円のGDPを生み出せる経済
- 不景気で20人が失業しており、GDPは9億円である
この場合の完全雇用GDPは10億円で、均衡GDPは9億円。GDPギャップは1億円になります。
デフレギャップ・インフレギャップとは
似た言葉に「デフレギャップ」「インフレギャップ」という言葉があります。これは次の意味です。
- デフレギャップ…潜在GDPからの総需要の不足分
- インフレギャップ…潜在GDPからの総需要の超過分
例えば、本来なら100万人雇用ができるのに、非自発的失業が1万人存在する場合、デフレギャップが発生していると言えます。
インフレギャップは具体例で表しづらいですが、既に失業者や遊休設備がないのに、さらに需要がある状態です。1企業の例で言えば、既に人を雇いきり、工場設備もすべて動かしているのに予約や注文が絶えないような状態です。
45度線におけるGDPギャップの計算方法
GDPギャップは完全雇用GDPと均衡GDPが与えられれば簡単にわかってしまうため、問題が出される場合、
という形が多いです。例えば、以下の通りですが、45度線モデルにおけるGDPギャップの計算について見てみましょう。
ある国のマクロ経済モデルが次のように示されるとする。
(Y:国民所得、C:消費、I:投資、G:政府支出)
- Y=C+I+G
- C=0.8Y+5
- I=60
- G=25
Q1 この経済での均衡GDPはいくらか?
Q2 この経済でのデフレギャップが10であるとすれば、完全雇用が実現した場合のGDPはいくらか?
均衡GDPは与えられた式に数値を代入すればよいだけなので割愛します。答えは450です。
詳しくは均衡GDPの記事をご覧ください。
インフレ・デフレギャップ算出時の「よくある」勘違い
であるから、単純に均衡GDP+デフレギャップとして、
450+10=460
とするのは間違いです。
デフレギャップとGDPギャップは、言葉の意味が異なるからです。
GDPギャップは、文字通りGDPの差を言いますが、デフレ・インフレギャップは需要側…つまり総需要曲線の過不足分のことを指すのです。
- GDPギャップ=完全雇用GDPー(デフレギャップ発生中の)均衡GDP
- デフレギャップ=完全雇用GDPの総需要曲線-(デフレギャップ発生中の)均衡GDPの総需要曲線
45度線の式で表すとこうです。(同じ意味です)
均衡GDP=Ye、完全雇用GDP=Yfとするなら、
- 均衡GDP(Ye)=C+I+G+Ex-Im
- Yf-Ye=GDPギャップ
- 完全雇用GDP(Yf)=C+I+G+Ex-Im+デフレギャップ
となります。
どうしてこうなるの?
わかりやすくするために、デフレギャップを例にとりましょう。
「デフレギャップがマイナス10」といった場合、総需要がマイナス10であることを指します。これが現実経済で言うとどういうことかというと、例えば、次のようなケースです。
この減った10が「デフレギャップ」です。
そして、その失業者が本来支出すべきだった分が無くなれば、その支出先のお店も所得が減ります。
すると、そのお店の労働者の所得が減り、その労働者の支出も減り…と波及して、全体のGDPが下がります。乗数効果というやつです。
この減ったGDP分(と完全雇用GDPとの差)をGDPギャップといいます。

GDPギャップの計算方法(解法)
これをもとに、もとの問題を解いてみます。
ある国のマクロ経済モデルが次のように示されるとする。
(Y:国民所得、C:消費、I:投資、G:政府支出)
- Y=C+I+G
- C=0.8Y+5
- I=60
- G=25
Q1 【省略】(答え)均衡GDP=450
Q2 この経済でのデフレギャップが10であるとすれば、完全雇用が実現した場合のGDPはいくらか?
1)総需要曲線に数値を代入する
均衡GDPを導き出したときと同じです。
Y=0.8Y+5+60+25
2)総需要曲線にデフレギャップを組み込む
Y=0.8Y+5+60+25+10
デフレギャップがある→均衡GDPは完全雇用GDPよりマイナスな状態。
つまり均衡GDPにデフレギャップ分を足すと、完全雇用GDPになる(インフレギャップの場合はマイナスにする)。
3)Yについて解く
Y=Ysとの連立方程式を解くと…
- Y=0.8Y+100
- 0.2Y=100
- Y=100÷0.2
つまり、
Y(完全雇用GDP)=500
45度線の図で見るGDPギャップとデフレギャップ
これまでのGDPギャップとデフレギャップを45度線で表すと次のようになります。

デフレギャップは「縦軸の差」
デフレギャップは、完全雇用時の総需要と実際の総需要との差でした。
総需要曲線(Yd)で表せば、完全雇用時の総需要曲線との縦軸の差になります。

Y=ax+bのグラフで言うと、bの数値が減るわけです(インフレギャップなら増える)。bは切片…縦軸の数値が下がるのでしたね。
傾きはそのままなので、関数、つまり総需要曲線がそのまま下にシフトします。
GDPギャップは「横軸の差」
インフレギャップは、完全雇用GDPと実際のGDP(均衡GDP)との差でした。
これは、完全雇用時の総需要曲線と45度線の交点で導き出せる完全雇用GDPと、実際の総需要曲線と45度線の交点で導き出せる均衡GDPとの差、つまり横軸の差になります。

この図の違いを覚えておけば、実際の問題に出くわしたときに混乱しないで済むと思います。
GDPギャップの政府統計や報道用語との違い
本記事では、主に45度線分析の観点から、GDPギャップやデフレギャップの言葉の意味について解説してきました。
しかし、政府統計や新聞社などの報道用語との同用語には意味が微妙に異なる場合があります。
| 45度線分析における用語 | 政府・報道における用語(例) |
|---|---|
| 潜在(完全雇用)GDPと実際のGDPとの差 | 潜在(完全雇用)GDPと実際のGDPとの差 |
| 潜在(完全雇用)GDP時の総需要と実際の総需要とのマイナスの差 | GDPギャップのマイナス分の呼称 |
| 潜在(完全雇用)GDP時の総需要と実際の総需要とのプラスの差 | GDPギャップのプラス分の呼称 |
GDPギャップの意味合いは計算方法が微妙に違うだけで、表現したい内容は同じである場合が多いです。
しかし、上記は一例であり、発表媒体によって微妙にデフレ・インフレギャップの使用方法や定義が異なる場合があるため要注意です。
GDPギャップやデフレギャップについてわからずに検索し、政府統計などを参照してもっとわからなくなる…というケースも散見されますのでご注意ください。
この記事にたどり着けたあなたはラッキーでしたね(笑)
【参考文献】
- 石川秀樹『試験攻略入門塾 速習!マクロ経済学』pp110-113、中央経済社、2011
- 吉川 洋『マクロ経済学 第4版(現代経済学入門)』岩波書店、2017
- 福田 慎一、照山 博司『マクロ経済学・入門 第6版(有斐閣アルマ)』有斐閣、2023

