マクロ経済学で必ず通らなければならない重要理論「IS-LM分析」について解説します。
まずは、
「そもそもなぜIS-LM曲線を学ぶ必要があるのか」
「IS-LMって何?」
「金利?国民所得???なぜ急に?!」
といった最初に出てくる疑問について解説します。
なお、長大になるため、詳しい関数式や曲線のシフトなどはここでは扱いませんのでご承知おきください。
IS-LM曲線(分析)とは
IS-LM曲線とは、金利と国民所得の関係を分析する理論である「IS-LM分析」で使う曲線です。
その名の通り、「IS曲線」と「LM曲線」が引かれている以下のグラフのことです。

IS-LM分析は、政府や中央銀行の行う「財政政策」や「金融政策」が行われたときにどのくらい効果が出るのか/でないのかについて、目に見てわかりやすくするためによく使われます。
IS-LM分析は、一国の経済の
- 金利がどう決まるのか
- 国民所得がどう決まるのか
のメカニズムを明らかにするのが目的です。後述しますが、金利は「国内の平均的な金利水準」、国民所得は「GDP(国の経済的豊かさ)」とほぼ同義です。
したがって、IS-LM分析では、IS曲線とLM曲線のそれぞれの式が登場しますが、それは最終的に国民所得と金利がどうなるのかを明らかにするために設定するものです。
IS-LM分析の中身①IS曲線とは
IS曲線は、教科書的には「財市場を均衡させる金利と国民所得の組み合わせ」です。
意味わからん。
そうですよね(笑)まず「財市場」について説明しますね。
財市場とは
財市場とは、財・サービスの生産にかかわるすべての市場をいいます。
米、リンゴ、魚などの農林水産から、車、ソファなどの工業製品、SNS、輸送などのサービス、そしてそれらを供給するための工業設備なども財市場に含みます。
ですが、IS-LM分析ではこれらを「支出の形態」で区分けします。具体的には、以下の通りです。
これらが全て合わさったものが「国民所得」です。
つまり、財市場とは、国民所得を生み出す市場であり、その内容は国民所得=消費+投資+政府支出+輸出-輸入で構成されます。※輸入はその国の消費が自国製品ではなく海外製品で満たされてしまうのでマイナスになります。
IS曲線とは?
IS曲線は、「財市場を均衡させる金利と国民所得の組み合わせ」と言いました。これ、ありていに言えば、
金利が○%なら、国民所得が○円になる(均衡する)
ことを表す、ということです。例えば、
と言ったように、IS曲線は、金利の水準によってどのくらいの国民所得になるかがわかります。
これをグラフにするとIS曲線になります。

なぜ金利の変化で国民所得が変わるのか?
なぜ金利の変化で国民所得が変化するかというと、企業が金利により投資量を変化させるからです。
企業は、通常新しく事業をする場合、銀行などからお金を借り入れます。
そのため、金利が上がれば返済の負担が多くなり、下がれば返済負担は少なくなります。
つまり、以下の関係にあるということです。
| 金利 | 返済負担 | 投資(借入)量 |
|---|---|---|
| 上がる | 増える↑ | 減る↓ |
| 下がる | 減る↓ | 増える↑ |
投資は、金額の規模が非常に大きく、また、投資により事業が始まれば雇用や資本設備への波及効果もあります。
したがって、国民所得に及ぼす影響はとても大きいです。そのため、IS曲線を通じて、金利と投資の関係を明らかにすることはとても重要なのです。
IS-LM分析の中身②LM曲線とは
LM曲線は、「貨幣市場を均衡させる金利と国民所得の組み合わせ」です。
…はい。こちらも説明しますね。まずは「貨幣市場」からです。
「貨幣市場」とは
「貨幣」は通貨のことなので、「貨幣市場」というと、
「貨幣を…買うのか…?」
と、一瞬こんがらがりますよね。
ですが、これは便宜上「貨幣市場」といっているだけで、実際は「債券市場」のことです。債券とは国債や社債などの金利付きの有価証券のことで、国や企業が直接市場から借金をする際に発行するものです。
この債券を買う市場のことです。
ですが、債券側から見たら、「債券を手放して、貨幣を買う」とも言えます。だから、
債券を持つか、貨幣を持つか
という考え方をしていたほうが、IS-LM分析では理解が早くなります。IS-LM分析では、貨幣の役割を分析する理論だからです。ですから、言葉の上では債券市場のことを「貨幣市場」というのです。
なぜ金利の変化が貨幣市場に影響するのか?
貨幣市場では「債券を買うかどうか」は金利が影響してきます。
債券の金利が10%から20%になった
なら、例えば100万円の債券を買えば、儲けは110万円から120万円に増えます。
このように、債券を買うと儲かる可能性が高くなる(リスクもその分増えます)ので、債券への需要が強まります(反対側にある貨幣の需要は低下します)。
とはいえ、
貨幣の金利はずっと0%。じゃあ金利がいくら下がっても、債券しか欲しくないのか?
と思うかもしれません。
しかし、そうではありません。貨幣には「流動性」といって支払い機能といった通貨としての役割があるからです。
例えば、景気が良くなって企業投資の成功率が上がれば、債券を買うよりも事業投資にお金を使った方が得になります。
だから、景気が良くなると債券を売って貨幣を手に入れようとする動きが増えるので、債券への需要は弱まります(反対側の貨幣の需要は強まります)。
この関係をまとめると次のようになります。
| 債券需要 | 貨幣需要 | |
|---|---|---|
| 金利が上がる | 増える↑ | 減る↓ |
| 金利が下がる | 減る↓ | 増える↑ |
| 国民所得が上がる | 減る↓ | 増える↑ |
| 国民所得が下がる | 増える↑ | 減る↓ |
この関係をグラフで表すと以下のようになります。

国民所得が増える(グラフでいうと右側)と、事業投資の魅力の方が大きいので、債券を買ってもらうには債券の金利を高くしなければなりません。
逆に、国民所得が減る(グラフの左側)と、「事業投資もそんなに儲かんないから債券が欲しい」という人が増えます。債券を売る側にとってみたら、金利をそこまで上げなくても債券が売れるため、金利は低くなりがちになります。
IS-LM分析の中身③「貨幣市場と債券市場」
これまで「財市場」と「貨幣市場」が登場しましたね。なぜなのかを最後に少しだけ解説します。
改めてまとめますが、IS-LM分析では、経済に存在するさまざまな市場のうち、次の二つを分析します。
【再掲】

なぜこの二つなのでしょう?
それは、マクロ経済は非常に複雑で、すべての市場を一度に分析するのは大変だからです。
そこでまずはIS–LM分析で、この二つの市場に注目し、その関係から国民所得や金利がどのように決まるのかを考えるのです。
しかし、他にも考えるべき指標はたくさんありますね。
例えば、IS-LMモデルに「物価」の影響も含めたもの存在します。それが「AD‐AS分析」と呼ばれているものです。
ちなみに、逆に、物価や金利の影響を考えないモデルもあります。それが「45度線モデル」です。45度線についてはこちらで詳しく解説しています。
このように、経済モデルは分析の目的ごとに分析したい項目を抜き出しているのです。
捕捉:金利≒国債の金利
IS-LM曲線でいう「金利」とは、厳密には「国内の金利水準」のことです。
ですが、ほぼ「国債」の金利だと捉えて問題はありません。
「金利」は一般的に借金や債券につく利子・利息の割合のことです。社債、国債、住宅ローン、カードローンなど、「金利」はあらゆる借金・債券についています。
ただ、IS-LM分析では「経済全体」を扱っているので、「金利」も個別の債券の金利ではなく「その国内の一般的な金利水準(いろいろな債券の平均的な金利水準)」のことです。
詳しい理由は省略しますが、中央銀行の金融政策で行う「オペレーション」で売買される債券は国債ですし、あらゆる債券の金利は、国債金利にほぼ連動して上下します(例えば、住宅ローンだけ金利が下がり、国債の金利が上がっていくという状況はほとんど考えられない)。
そのため、個別の債券の金利の動向はここではあまり気にせず、「国債の金利」くらいに思っておくのが○です。
【参考文献】
- 吉川 洋『マクロ経済学 第4版(現代経済学入門)』岩波書店、2017
- 福田 慎一、照山 博司『マクロ経済学・入門 第6版(有斐閣アルマ)』有斐閣、2023

