『介護予防・日常生活支援総合事業』は介護保険法上の制度のことです。
長い名前ですが利用する人にも行政の人にもケアマネジャーの方にもとても大事な制度です。
ここでは、介護予防・日常生活支援総合事業についてわかりやすく解説します。
介護予防・日常生活支援総合事業とは
介護予防・日常生活支援総合事業は、介護保険法で位置付けられている事業です。略して総合事業とも言われます。
全ての高齢者(と要支援者)を対象に、「介護予防」につながるあらゆる「日常生活の支援」を「総合的に」行う事業です。
介護予防・日常生活支援総合事業は何のため?
介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)は、高齢化が進む日本において、少しでも介護が必要になる人を減らすために「介護予防特化」の事業として始められました。
その理由は、介護が必要な高齢者が増えすぎて、介護の担い手やその財源が不足してしまう恐れに備えるものです。
また、寝たきりになってから介護されるよりも、元気なうちから予防を行うほうが、利用する本人にとってもメリットがあります。
地域支援事業の一つ
介護予防・日常生活支援総合事業は、地域支援事業の事業の一つです。
「地域支援事業」はその下に「総合事業」と「包括的支援事業」「任意事業」の3つの事業がぶら下がっています。


②包括的支援事業、③任意事業は、どちらかというと行政やケアマネジャー向けの施策が多い中で、③総合事業は地域の高齢者に向けた実際の高齢者にサービスを行うための事業です。
介護予防・日常生活支援総合事業の内容
では、介護予防・日常生活支援総合事業は具体的にどのような事業になっているのでしょう。
まず2つに事業に分けられる
総合事業はいくつかに細分化されたさまざまな事業の名称です。まず、総合事業の下にはさらに2つの事業があります。
それが、「一般介護予防事業」、「介護予防・生活支援サービス事業」と題する事業です。

そしてこの2つの事業も、さらにその下にいくつもの事業がぶら下がっています。
一般介護予防事業
一般介護予防事業は、要支援者や要支援者になりそうな人を要介護状態にしないために食い止めるためのあらゆる事業のことを言います。具体的には以下の5事業があります。

それぞれの事業の中身については市町村実施であり、市町村によって大きく異なります。
行政資料では、以下のように説明されています。

一般介護予防事業の対象者
一般介護予防事業はすべての高齢者が対象になります。
介護予防普及啓発事業の中には「体操教室や講演会などの開催」が事業内容に含まれますが、これは65歳以上の方(厳密には介護保険の第1号被保険者)であればだれでも利用することができます。
一般介護予防事業のサービスの提供者
一般介護予防事業内で行われるサービスの提供者は市町村になります。
先ほどの介護予防普及啓発事業で行われる「体操教室や講演会などの開催」も、市役所の職員が企画し、運営します。場合によっては民間の業者などに委託することも可能です。
介護予防・生活支援サービス事業
介護予防・生活支援サービス事業の下には「第1号訪問事業」「第1号通所事業」「第1号生活支援事業」「第1号介護予防支援事業」と4種類あります。

第1号訪問/通所事業では、その下にそれぞれ5つ(通所は4つ)のサービスが位置づいています。
これらはすべて軽度者向けの訪問介護と通所介護と考えて差し支えありません。
ただ、介護予防訪問介護/通所介護とより基準の緩いサービスや地域住民が行うサービスなど、規制が緩く、簡素なサービス後世になっています。
以下は厚労省資料から。訪問と通所のサービスの詳細が書かれています。特に「サービス種別」の欄が、それぞれの事業のなかに位置づく5つ(4つ)のサービスのことです。


その他の事業に関しても考え方は同じですが、簡単に。
第1号生活支援事業(その他生活支援サービス)
訪問・通所介護以外の介護サービスで、地域住民やボランティアなどが提供するサービス。地域包括ケアシステムが求める「住民同士の助け合い」を具現化させようとしているサービス。
第1号介護予防支援事業(介護予防ケアマネジメント)
ケアマネジャーが行うケアマネジメントの介護予防版です。実施するのは地域包括支援センターで、ケアマネジャーではありません。また、サービスによってはモニタリングが省かれていたりと、簡素になっています。
介護予防・生活支援サービス事業の対象者
一般介護予防事業と異なり、介護予防・生活支援サービス事業の対象者は要支援者と「基本チェックリスト」という国が用意したチェックリストの該当者が対象となります。これに該当しない一般の高齢者はサービスを受けられません。
「公共交通機関に一人で外出できているか」「口の渇きが気にならないか」など25項目が並んだ、要介護認定の認定調査の簡易版のようなリスト。1~5の間に何個、計何個以上で○○といった形で使用する。
→リストの詳細は厚労省Webサイト参照
介護予防・生活支援サービス事業のサービスの提供者
一般介護予防事業と違い、介護予防・生活支援サービス事業は、さまざまな主体がサービスを提供しています。
まず、第1号訪問/通所事業でも、居宅サービス事業者やボランティアなど多彩です。詳細は上記の厚労省資料の図の「サービス提供者(例)」をご参照ください。
(ちらっと本音)予防給付から移動してきた受け皿
2014年まで、要支援者向けのサービスである「予防給付」には「介護予防訪問介護」と「介護予防通所介護」がありました。しかし、厚労省内の検討会議で、介護保険財政がひっ迫する中、これら二つが安易に使用され、本当に必要なのかどうかという議論が行われました。
例えば、自分で掃除ができたり家族が手伝えたりするのに「ちょっと大変だから」といった理由で訪問介護を使用したり、単なる友達作りだけの目的で通所介護を使用したり、といった具合です。
そこで予防給付による訪問・通所介護を廃止しようという声もあがりました。ただ、適切なアセスメントに基づけば、これらのサービスも必要であるという反論もなされました。

結果として、地域支援事業の総合事業内(介護予防・生活支援サービス事業内)にこれを「第1号訪問事業」「第1号通所事業」と位置付けることで、より予防的側面を意識するなら存続OKということになりました。いわば、予防給付からは廃止され、そっくりそのまま地域支援事業に移行したということです。
このように総合事業は予防給付から移動してきた訪問・通所の受け皿となったわけですが、財源構成などが若干変わっただけで、サービスを受ける側にとっては何ら変わりのない制度変更(ただ複雑になっただけ)とも言えます。
覚えてしまえば後々有利になる
介護予防・日常生活支援総合事業は大変複雑な事業ですが、国や市町村が最も重視している事業ですし、ケアマネ試験での出題頻度も非常に高いです。したがって、一度覚えてしまえば逆に今後の強い味方になるでしょう。
今後も制度の拡充が図られていくことでしょうから、今後の制度改正の動きについても要注目です。


